2021.06.01
いまやどの家庭にも一台は置かれている便利な家電の電子レンジ。
電子レンジはいったいいつ頃から登場し、どのような変遷を経ていまのような形になったのでしょうか。
この記事では電子レンジの歴史とその変遷について紹介します。
どんな食品であれ、一般的に食品は水分を含んでいます。
電子レンジの加熱原理はマイクロ波を照射して食品に含まれている水分子を振動・回転させて温度を上げる、いわゆるマイクロ波加熱を利用しています。
その原理の発見はいまからまだ100年も経っていないのです。
このマイクロ波の原理が初めて発見したのが1945年に、アメリカ合衆国のレイセオン社で働いていたレーダー設置担当の技師、パーシー・スペンサー。
”レーダー装置の実験中にマグネトロンの前に立った彼のポケットの中のチョコバーが溶けていたことを偶然発見した。”
というような出来事が有名なお話としてありますが、真偽の程は定かではありません。
最初にレーダー装置で調理した食物は慎重に選ばれた結果、ポップコーンでした。スペンサーの電子レンジでは、紙袋を使ったトウモロコシの調理法で特許を取っています。
この発見から1947年に「レーダーレンジ」として製品化されていますが、普及には至りませんでした。
日本での初めての原理の発見は1944年、大日本帝国海軍によるマイクロ波を照射して航空機などを遠隔攻撃するための光線兵器の研究からでした。
初の実験対象はサツマイモで、ふかし芋のようになったと伝えられています。
その後も研究は進められましたが、大型化をすることはできず兵器としての開発は頓挫しました。
1959年に国産初の電子レンジが開発され、1961年に業務用の国産電子レンジが発売。
1962年に満を持して日本国内初の量産品電子レンジ(54万円)が発売されますが、当時の大卒初任給が約1万7000円と考えるとあまりにも高価でまだ普及はしませんでした。
1964年、電子レンジが業務用として東海道新幹線のビュッフェに装備されて話題となり、そのスピード加熱ぶりが広く一般に認知されます。
その1年後の1965年、「電波で新しい味」「すばやく楽しいホームクッキング」をキャッチフレーズに初めて家庭用電子レンジが発売されましたが、まだまだ価格が高く実際には業務用として、ホットドッグなどの再加熱用に多く使われていました。
今でこそ一家に一台あるような家電ですが、日本では当初冷めた料理を温めたり、冷凍食品を解凍したりする程度の役にしか立たないとされる調理器に、なぜ高いお金を払って購入する必要があるのか全く理解されず、消費者からすんなりと受け入れられることはありませんでした。
実際に家庭に普及していくのは、電子レンジの低価格化と時代的背景から世間に浸透していきます。
1966年、庫内の加熱ムラを減少させるため、食品を回転させながら調理するターンテーブル式の電子レンジが発売。
そして1976年、ついに低価格のファミリータイプ(価格:6万円)が発売され、購入層が大幅に拡大しました。また、従来は食品の種類・分量・初温により加熱時間をセットしていましたが、温度センサー付きの機種が発売され、自動で再加熱ができるようになったのもこのときなのです。
これ以降1977年にオーブンレンジ、1980年にオーブングリルレンジ、1986年にオーブントースターと電子レンジが一体化したトースターレンジなどが製造され進化し、今日の電子レンジに近づいていました。
電子レンジが普及する要因となったのは電子レンジの低価格化以外に、当時の時代背景があります。
高度経済成長で暮らしが豊かになる半面、「家族が食卓を囲み揃って食事をする文化」が過去のものとなっていきます。
その過程で簡単に料理を温められる手段へのニーズが増大していき、普及をしていくのでした。
また冷凍食品の普及と品質向上、冷凍食品を保存できる冷凍庫つきの冷蔵庫の普及、また電子レンジで調理することを前提とした加工食品が販売されるようになり、利便性の高まりと共に普及率も高めていきます。またそれに伴う大量生産と価格の下落が、さらなる普及を後押ししました。
2000年代の日本では普及率は90%台後半を保ち、温める機能のみの単機能な電子レンジであれば1万円以下で購入でき、レンジ・ヒーター・スチームを組み合わせて調理する複合型多機能タイプも登場しています。
このような状況によって、電子レンジで温めればそのまま食べられる食品が多く店頭に並ぶようになりました。
コンビニエンスストアを中心に風味もよく簡便な冷凍食品や、弁当や惣菜などが複数種類取り揃えられるようになり、スナックフードコーナーには電子レンジ対応メニューが定番商品として並んでいます。
電子のレンジの歴史について紹介しました。
大量生産による価格の下落と時代による社会的な変化によって、受け入れられてきた電子レンジ。
いまもなお、新しい機能の追加などがあり、今後もどのような進化を遂げていくのか期待ですね。
この記事でご紹介した内容は、家電製品に関連する一般的な情報をまとめたものであり、全てのメーカー、全ての製品に該当する内容ではございません。また、各メーカーや製品によって定められた取扱方法やメンテナンス方法と異なる対応をした場合は、安全性や品質保証を損なう可能性もございます。詳細はメーカーのサポートセンター、 またはプロの技術者にご相談していただくことを推奨いたします。