2021.05.04
現在、紙パック式掃除機やサイクロン式掃除機、さらには自動で掃除をしてくれるロボット掃除機と様々な掃除機が家庭で使用されています。
そのような掃除機が登場するまでに掃除機はどのような変遷を辿ってきたのでしょうか。また初めて掃除機が開発されたのはいつになるのでしょうか。
この記事では掃除機の昔と今、その歴史について解説します。
世界最初の掃除機の名称は「真空掃除機」。1868年にシカゴのアイヴス・マガフィー(Ives W. McGaffey)によって発明されています。原理は、手でレバーを引いて負圧(外と中の気圧の違いを利用した力)を作り出し、その力によってノズルからゴミを吸い取り容器に溜めるという簡単な仕組みのものでした。
彼は1869年6月8日にこの特許を取得し、ボストンにあるカーペット清掃会社に売り込むことに成功。
こうして誕生した世界最初の真空掃除機がシカゴとボストンで発売されましたが、当時としては$25(この頃の1ドル=現在の18ドルほど)もする高価なものであり、ノズルをゴミに当てながらいちいち手でレバーを引くのが面倒という欠点もあって、やがて市場から姿を消していきました。
最初の電気式真空掃除機は、1901年にイギリスのヒューバート・セシル・ブース(Hubert Cecil Booth)が発明したもので、布フィルターを備えていました。
ブースは列車の座席から塵を吹き飛ばす装置のデモンストレーションを目にし、塵を吸い取った方がずっと役立つと考えていました。
そのアイデアを試すため、彼はレストランの椅子の上にハンカチを広げ、それを自分の口で吸いつけ、さらに塵を吸い付けてみると塵がハンカチの下面に集まったのを見て、彼はそのアイデアがうまくいくと確信しました。
その着想からブースは Puffing Billy と名付けた大きな装置を作っていますが、あまりの大きさのために掃除すべき建物の前まで馬で引いていったといわれています。
最初の家庭用の電気掃除機は1905年、アメリカのチャップマン・アンド・スキナー社から売り出されていますが、ただしこの掃除機は家庭用型とはいえ重さが約40キロもありました。
そして、1907年、オハイオ州で学校用務員をしていたジェームズ・マーレー・スパングラーは、扇風機と箱と枕カバーを使って電気掃除機を発明。これがアップライト型掃除機の原型となっています。
ちなみに日本で1931年に発売された最初の電気式真空掃除機はこのアップライト型(ホウキ型と呼ばれていた)です。
スパングラーのデザインは、単にゴミを吸引するだけでなく、大きめのゴミを集めるための回転ブラシを備えていました。
スパングラーは自身で発明を商業化する資金がなかったため、1908年6月2日に取得した回転ブラシの特許を、彼のいとこの夫W・H・フーバーに売却。
フーバーは革製品などを販売する会社を経営しており、1908年に最初の機種 ‘Model O’ を70ドルで発売開始。これが掃除機の初の商業用モデルとなっています。
欧米ではフーバー社は今でも電気掃除機を含む家庭用掃除用品メーカーとして存続しており、イギリスでは電気掃除機を使うことを “hoover” という動詞で表したりもしています。
登場からしばらくは掃除機は贅沢品でしたが第二次世界大戦後、じゅうたんを多用する西洋で先に普及していきます。
西洋以外の地域では木やタイル、畳の床が一般的で掃除機を使わなくともほうきや雑巾、モップで十分掃除できたため少し普及までに時間がかかることになりました。
日本では、米国製品を参考に作られた真空掃除機が1949年に秋葉原等で販売を開始。
しかし当時の日本家屋のほとんどは畳と板間であり、わざわざ高価な掃除機を購入するまでもなく「はたき」や「ほうき」でゴミを家の外に掃き出す方が簡単で早かったため、真空掃除機は殆ど普及しませんでした。
しかし、1960年代に公営団地ブームが起こると、近所迷惑のため家の外にゴミを掃き出すことが難しくなり、ほうきの簡便さが半減したため、まず公営団地に住む人に受け入れられていきます。
また、団地や新しい家には洋室が取り入れられたことでじゅうたんが流行したためほうきでは掃除しにくくなり、じゅうたんの毛の中に溜まったホコリによってノミが大量発生することも多く一般家庭に普及していきました。
初期の真空掃除機は、使い捨てではない布フィルターなどが使われていたため、ゴミ捨ての際には大量のホコリが舞い、またフィルターを水洗浄をしないと吸引力が回復しないなどの面倒が多いものでした。
しかし、紙パック式真空掃除機が1980年の初め頃に発売されると、使い捨ての紙パックフィルターによってこれらの問題が一気に解決されたため、ほとんどの家庭に普及していきます。
1990年代になるとサイクロン式掃除機が増え、現在でも紙パックと並ぶ主要掃除機となっています。
そして2000年代になると、私たちの健康に有害なダニやミクロレベルの塵埃まで除去できる掃除機や家庭用ロボット掃除機なども登場し、いまもなお進化をし続けています。
掃除機の昔と今、その歴史について解説をしました。
今もなお掃除機は進化をし続け、いつか人が掃除をしなくてもいい時代なんてものがくるかもしれないですね。
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